分析バリデーション解析用Excelシートの公開と、少しバリデーションの話

2019年9月16日

たまには、ブログを更新しない言い訳にしている本業の話です。ただ、今回の話は医薬品製造業のバリデーションの話と、分析バリデーションを実施する際に必要になる解析シートの公開に関する話題なので、読者は非常に限られてくるかと思います。それでも良い方のみ読み進めてください。御託はいいから解析シートをくれよという方はこちらからどうぞ。

私は製薬会社に勤務している関係上、GMP省令と呼ばれる法律に従って業務を行っています。この法律、簡単に言えば安全・安心な薬を作るために守らなければならない最低限のルールが書かれています。この省令の一部に、バリデーションという概念があります。このバリデーションという単語は、業界によってその意味が異なっていますので、他業界の方と話をする際は注意が必要です。インターネット上に業界の垣根はありませんので、例によって定義から入ります。私が認識しているバリデーションの定義は、対象物の科学的妥当性を評価し、その評価結果を文書化する作業のことです。日本で商売する製薬会社が参照すべき定義は、GMP省令の第一章 第二条に書かれています。

この省令で「バリデーション」とは、製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法(以下「製造手順等」という。)が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることをいう。

さて、何を言っているのか分からないと思いますが、私にも分かりません。法律は解釈の余地を残すため、一義的な書き方をしないので、法律だけ読んでも具体的な内容はイメージできませんね。なので、イメージしてみましょう。例えば、寒い日は手や顔を洗うのにお湯を使いたいですよね?しかし、蛇口をひねってお湯を出そうとしても、しばらくは冷たい水が出てきますよね?これは、屋外に設置されている給湯器(お湯を作る機械)から蛇口までの間に距離があるためです。私は冷たい水に触るのが嫌ですが、水を出しっぱなしにするのも勿体ないので嫌です。では、どうしたら水がお湯になったことを知ることができるでしょうか?私が思い付く方法は下記の通りです。

  1. 水がお湯になるまで我慢して指先を水につけて温度を確認する
  2. 温度計を使って水温を測る
  3. お湯が出てくる時間を測っておいて、毎回その時間を待機する。

多分、日本の大部分の人が1の方法を採用していると思います。私も私生活では1ですが、それでは話が終わってしまうので、他の方法を考えます。2の温度計を使う方法は、確実ですが、毎回手を洗うたびに温度計を持ってくるのは面倒です。3のお湯が出てくる時間を測っておく方法は、最初の計測は面倒ですが、その後は時計1つあればいつでも実践可能です。実際に自宅のキッチンの蛇口とスマホのストップウォッチを使って測定してみたところ、水がお湯になるまで22秒(n=1)掛かりました。この結果に基づき、「朝一でお湯を使う際は、22秒待機してから使用すること」と書面にすることが、バリデーションの考え方になります。省令を引用すると下記のような感じです。

この省令で「バリデーション」とは、製造手順等(朝一でお湯を使う際は、22秒待機してから使用すること)が期待される結果(水がお湯になっている)を与えることを検証(事前にストップウォッチで計測)し、これを文書とすることをいう。

実際のバリデーションは、もっと厳密なルールが必要ですが、今回はバリデーションのイメージを掴んでもらえれば良いので、詳細は割愛します。

さて、なんで急にバリデーションの話をし始めたかというと、タイトルの通り、医薬品の定量法の分析バリデーション解析用シートを公開しようかと思いましたが、内容が内容なだけに、どこに需要があるか分からないレベルなので、付け足しな感じでバリデーションについて説明してみました。需要がなさそうなら公開する必要もないかとも思いましたが、下記の理由により公開に踏み切りました。

  1. ブログ更新が滞っている理由に本業を言い訳にしているため、成果物が必要な気がした
  2. 本業のために作成していたが、Excelシートの開発時間は100%自宅であり、作成に用いた統計解析の書籍も100%自費購入のため
  3. 自己満足
  4. 分析法バリデーションの報告に必要な統計解析が難しくてワカンネーヨという迷える子羊のため

という訳で、解析シートはこちらからダウンロードしてください。直感的にわかるように意識して作りましたが、使い方が分からない場合はご一報下さい。なお、分析バリデーションって何?っていう方で、興味がある方はPMDAのホームページからICH-Q2を参照してください。

今日はここまで。

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雑記

Posted by 黒箱