[Excel関数]アレニウスの式により2つの温度間の化学反応速度の比を計算するカスタムワークシート関数

2022年3月14日

概要

アレニウスの式により、2つの温度間の化学反応速度の比率を計算するカスタムワークシート関数ARRHENIUSRATIOを作成しました。2つの温度間の反応速度の比を求める場合はARRHENIUSカスタムワークシート関数をご使用ください。

機能

アレニウスの式により、熱力学温度及び活性化エネルギーを使用して、2つの温度間の化学反応速度を算出します。活性化エネルギーの単位はジュール/モルまたはジュール/粒子(原子,分子,イオン等)に対応しております。活性化エネルギーの単位がジュール/モルの場合、計算に使用する気体定数は8.31446261815324です。また、ジュール/粒子の場合、計算に使用するボルツマン定数は1.380649×10^-23です。

計算式

2つの熱力学温度\(T_{1}\)及び\(T_{2}\)の化学反応速度定数\(k_{1}\)及び\(k_{2}\)の比\(\frac{k_{2}}{k_{1}}\)の式を下記に示す。

\( \Large{ \frac{k_{2}}{k_{1}} } \normalsize{=exp} \Large{ ( \frac{Ea}{R} ( \frac{1}{T_{1}} – \frac{1}{T_{2}} ) ) } \)

\( A:頻度因子 \)
\( Ea:活性化エネルギー(J/mol) \)
\( R:気体定数(8.31446261815324)(J/(K \cdot mol)) \)
\( T:熱力学温度(K) \)

または

\( \Large{ \frac{k_{2}}{k_{1}} } \normalsize{=exp} \Large{ ( \frac{Ea}{K_{B}} ( \frac{1}{T_{1}} – \frac{1}{T_{2}} ) ) } \)

\( A:頻度因子 \)
\( Ea:活性化エネルギー(J/particle) \)
\( K_{B}:ボルツマン定数(1.380649×10^{-23})(J/K) \)
\( T:熱力学温度(K) \)

構文

ARRHENIUSRATIO(頻度因子, 絶対温度, 活性化エネルギー, 活性化エネルギー単位 )

引数説明引数の指定既定値
基準温度基準となる温度を熱力学温度(絶対温度)で指定します。
セルシウス度(℃)を熱力学温度に変換する場合は、セルシウス度に273.15を加算して下さい。
必須(無し)
比較温度比較する温度を熱力学温度(絶対温度)で指定します。
セルシウス度(℃)を熱力学温度に変換する場合は、セルシウス度に273.15を加算して下さい。
必須(無し)
活性化エネルギー活性化エネルギーを指定します。第4引数を省略した場合、活性化エネルギーの単位はJoule/molです。必須(無し)
活性化エネルギー単位活性化エネルギーの単位を整数で指定します。
 1 : joule/mol(ジュール/モル)
 2:joule/particle(ジュール/粒子(原子,分子,イオン等))
省略可能1

コード

下記のコードを全てコピーし、標準モジュール等に貼り付けて下さい。下記のコード表示欄の右上に「Copy」ボタンがありますのでご使用下さい。なお、標準モジュールが何だか分からない方は、 Excelのカスタムワークシート関数を使用する方法 を参照して下さい。
' [Excel関数]アレニウスの式により2つの温度間の化学反応速度の比を計算するカスタムワークシート関数 
' Copyright (c) 2020-2024  黒箱 
' This software is released under the MIT License;. 
' このソフトウェアはMITライセンスの下でリリースされています。 

'* @fn Public Function ARRHENIUSRATIO(ByVal T1 As Double, ByVal T2 As Double, ByVal Ea As Double, Optional ByVal EaUnits As Long = 1) As Variant
'* @brief アレニウスの式より、2つの温度間の化学反応速度の比を求めます。
'* @param[in] T1 基準となる温度を熱力学温度(絶対温度)で指定します。セルシウス度(℃)を熱力学温度に変換する場合は、セルシウス度に273.15を加算して下さい。
'* @param[in] T2 比較する温度を熱力学温度(絶対温度)で指定します。セルシウス度(℃)を熱力学温度に変換する場合は、セルシウス度に273.15を加算して下さい。
'* @param[in] Ea 'Ea 1molあたりの活性化エネルギーを指定します。単位はJ/molです。
'* @return Double 化学反応速度の比率を返します。
'* @details
'*
Public Function ARRHENIUSRATIO(ByVal T1 As Double, ByVal T2 As Double, ByVal Ea As Double, Optional ByVal EaUnits As Long = 1) As Variant
Const RInv As Double = 1 / 8.31446261815324 '気体定数の逆数
Const KBInv As Double = 1 / (1.380649 * 10 ^ (-23)) 'ボルツマン定数の逆数

    Dim c As Double
    
    Select Case (EaUnits)
    Case 1: c = RInv
    Case 2: c = KBInv
    Case Else
        ARRHENIUSRATIO = CVErr(2036) '#NUM!
        Exit Function
    End Select

    ARRHENIUSRATIO = Exp(Ea * c * (1 / T1 - 1 / T2))
End Function

使用例

医薬品の安定性試験の反応速度

ある医薬品の安定性試験における、25℃(長期保存試験)と40℃(加速試験)の反応速度の比率を求めてみます。この際、ある医薬品の活性化エネルギーは22.1kcal/molとします。

まず、ARRHENIUSRATIO関数に指定する温度の単位は熱力学温度なので、各試験条件の温度に273.15を加算します(25 + 273.15及び40 + 273.15)。

次に、ARRHENIUSRATIO関数に指定する活性化エネルギーの単位はジュールですので、kcal(キロカロリー)をジュールに変換する必要があります。ジュールをカロリーに変換する係数は、旧計量法より4.184とします。また、補助単位k(キロ)が付いているので、1000倍します。

以上より、数式は下記のようになります。

=ARRHENIUSRATIO( 25+273.15, 40+273.15, 22.1 * 4.184 * 1000)

この数式の結果は5.97となります。加速試験6箇月が長期保存試験36箇月に相当しますが、その比率は6倍です。この結果より、医薬品の安定性試験条件は、活性化エネルギーが22.1kcal/molと仮定して設定されていることが分かります。なお、同じ条件で25℃と60℃(熱苛酷試験)の反応速度比を算出場合は、下記の数式となります。

=ARRHENIUSRATIO( 25+273.15, 60+273.15, 22.1 * 4.184 * 1000)

この数式の結果は50.34となります。つまり、25℃の36箇月は、60℃で21.75日(21日と18時間)、約3週間に相当します。

なお、これらの比率はあくまで活性化エネルギーが22.1kcal/molであることを前提としておりますので、各自の実験に適用できるかはよく考えてから使用してください。

プログラムの利用について

本プログラムのライセンスは「The MIT License」を適用しています。

本プログラムは無償で利用できますが、本プログラム内の著作権表示及びライセンス表示は削除せずに表示しておいて下さい。

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