文書様式に入力しているデータはもっと管理・活用すべき話
2019年9月16日
今回は、文書様式に入力するデータの管理に関する話です。
会社勤めをしていると、WordやExcelで作成された文書様式(電子ファイル)に文字を入力する仕事がよくあります。例えば、見積書、発注書、請求書、クレーム発生報告書、残業申請書又は作業報告書などです。一部の業界では、変更計画書、逸脱発生報告書又は校正実施報告書などがあります。これらに共通していることは、「決められた入力欄に決められた情報を入力する」ということです。
例を見てみましょう。下記の発注書は、Excelのテンプレートから取得したものです(少し編集しています)。何の変哲も無い発注書ですね。使い方も直感的に分かると思います。
あなたも、このような文書様式に必要事項を入力して印刷した経験があるかと思います。しかしその入力作業、文書様式に直接入力しているのなら、非常に勿体無いことをしています。あなたが管理職で、部下にこのような文書様式を使わせているなら、会社に多大な損失を与えています。失ったものは、データの再利用性です。データが再利用可能な形で保存されていると、業務の意思決定や資料作成に使えますし、これらのためのデータ収集の時間も削減できます。会社の未来と時間のためにも、企業活動を通じて発生したデータは再利用可能な形で保管しておかなければなりません。
では、どうすれば良いのでしょうか。最低限必要なのは、下記の3つです。
- 電子データで保存すること
- データを加工可能なファイル形式で保存すること
- データの入力部と表示部を分離すること
第1に、データは電子データで保存しましょう。データというものは、その形が電子データというだけで価値があります。印刷物のデータ(文字や写真)は人間にしか扱えませんが、電子データはコンピュータで処理することができます。コンピュータの速度や正確さは語るまでもないでしょう。ここで注意したいのが、例に出したExcelの発注書のように、人間が見やすいレイアウトのワークシートを用意しただけでは、電子データは保存されません。多くの人は自分が使いやすいフォルダにExcelファイルをコピーし、印刷した後はデータを保存しないか、保存しても次回使用時に前のデータを上書きします。データが無くなっているのであれば、再利用は不可能です。
第2に、データを加工可能なファイル形式で保存しましょう。プログラミングが可能な方は、電子データであればどんな形式でもある程度の加工が可能でしょうが、大多数の人はプログラミングが出来ないと思いますので、文書様式はExcelで作成・保存しましょう。
第3に、データは入力部と表示部を分離しましょう。言い換えると、人間が見やすいレイアウトのワークシートは表示専用のワークシートにして、入力用シートを別に作成します。入力用シートは下記のようなイメージです。冒頭で示した発注書のような表示用シートは、このシートからデータを参照します。
なぜそんな面倒なことをする必要があるのでしょうか?入力と表示を分離する必要性を理解するために、分離しない場合の問題点を考えてみましょう。「人間が見やすいレイアウトのワークシート」では長いので、「非構造化シート」と呼びましょう。非構造化シートを保存する方法は、Excelファイル自体をコピーする方法と、1つのExcelファイル内でワークシートをコピーして行く方法の2通りがあります。前者のファイル単位で保存する方法は、そのままではExcelのワークシート関数は一切使えませんので、データを利用するためにはファイルを1つ1つ開いて1つのシートにコピーしていく必要があります。後者のシート単位で保存する方法を考えてみましょう。こちらはワークシート関数が使用できますが、大半の関数は、データが行か列に連続して配置されていないと使い勝手が非常に悪いか、全く使えません。INDIRECT関数を駆使すれば、ファイル単位で保存されている場合よりは楽にデータを1つのシートに集約することができますが、シート名に規則性がないと苦労するでしょうし、使い方が分からない方もいると思います。こんなことなら、最初からデータが連続的に配置されるように入力していれば楽ですね。はい、最初の主張に戻ってきました。入力と表示を分離するという面倒をしないと、データの集約というもっと面倒なことが発生してしまうのです。
分離シートを用いると、下記のようなメリットがあります。
- Excelを使用してデータ集計が可能となる
- 情報が1箇所に集約されているため、過去データの検索、参照及びコピー&ペーストが容易である。
- データを別のソフトウェアに移管する際、移管用フォーマット(CSV等)に容易に変換できる。
- Excelファイルの数が1つで済むため、ファイル管理及び様式改定が容易である。
- 入力するセルが連続しているため、キーボードとマウスを行ったり来たりする必要が無く、入力が速くなる
- どのセルに何を入力したら良いか一目瞭然である
これらの中で、特に1と2は一度体験すると非構造化シートにアレルギー反応が出るレベルです。
しかし、分離シートにもデメリットがあります。
- はじめに使用方法の教育が必要である
- シートの作成・維持管理には一定のITスキルが必要
- 誰かがファイルを開いていると他の人が使用できない
3は使用者の規模が大きくなってくると問題ですが、1つの部署の中で使用する分には運用でカバーできます。問題は、2のシート作成です。上手く設計しないと様々な問題が発生します。代表的なものは下記の通りです。
- そもそも作成できる人がいない
- 表示が見切れる
- 表示シートに注釈等の追加情報を入力できない
- 必ず入力すると思っていた項目が空欄だとエラーが出る
- 予想外の入力により上手く表示されない
しかし、これらのデメリットを差し引いてでも、分離シートを使用する価値は十二分にあります。上司から非構造化シートを1000個渡されてデータを集計してくれと言われて途方にくれる前に、分離シートを作成しましょう。
文書様式に入力されたデータは、会社の活動の中で生み出された有益な情報です。また、決して安くは無い人件費を掛けて生み出された価値のある情報です。それらは会社の維持・発展のために使われるべきであり、誰もが再利用可能な形で保管・管理されなければなりません。そのための第一歩として、文書様式はデータの入力部と出力部を分離しましょう。それが出来るのは、この記事を読んだあなたにしか出来ません。やり方が分からなければ相談に乗りますので、是非ともお声掛けください。
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